その日よしきは会社を午後半休していた。仕事も落ち着いていて、半日ぐらい休んでも影響ないのと、先週末に入ったデリホスの予約に応えるためだった。
「午後2時から3時間か…」よしきは思った。
「お茶のデートにしては長いな…」
確かにお茶だけで3時間は長く思われた。
「でも…きれいな人だったなぁ…」よしきはSNSのコミュニティで依頼人の洋子の写真を見ていたのだった。
お茶だけで3時間というのに少し疑問を持ちつつも、よしきはまた少し心躍らせながら待ち合わせ場所へと向かった。
待ち合わせ場所は都内の静かな一角にある洒落て人目の少ないカフェだった。
中に入ると既に洋子が席で待っていた。
片手を少し上げ、ほほ笑む洋子によしきは気づいた。
お互いの顔は写真で知っていたから間違うことはなかった。
「こんにちは。はじめまして。」
「はじめまして。」
向い合せに席について洋子の顔を見たよしきははっとした。写真以上に洋子が美しかったからだ。
「ホストさんっていうからスーツでいらっしゃるのかと思ってましたわ?」
そう言われてよしきは我に帰った。
「あ、はい。えっと…そういうホストもいますけど、僕の場合は普段着なんです。本業もこのスタイルなんですよ。」
実際よしきは会社帰りのスタイルであった。
「そう、意外だったわ。ねぇ、何をお飲みになる?」
「あ、えっと、ホットコーヒーを。」
よしきはやや主導権を握られた格好になってしまった。洋子はよしきに興味津々であった。
「ねぇ、聞いていいかしら?」
「はい。」
「ちゃんとお仕事お持ちなのにどうしてホストさんをやってらっしゃるのかしら?」
「それは…僕が女性を好きだからです。それと…僕みたいな人間を必要としてくれる女性がいるから、でしょうか…。」
「男性だったらほとんどの方が女性を好きでしょう?」
「ええ、まぁ。だから、要はこういう仕事に飛び込めるかどうかは、女性を癒してあげたいと思う気持ちが強いかどうか、じゃないんでしょうか。癒されたいと思うよりも癒したいと思う、というか…」
「ご家族は?彼女とか奥さんはいらっしゃらないの?」
「いません。例えいたとしても、この仕事をしている時間はお客様だけが唯一の女性なんです。この瞬間、僕にとっての女性は洋子さんだけなんです。場合によっては母親だっていないことになっちゃいます。」そう言ってよしきは微笑んだ。
「そう…。じゃぁ私も癒していただけるのかしら?」
「もちろんです。僕なりのやり方であれば…。」
よしきは少しだけ主導権を取り戻した感じがした。
「でも、癒されたい、って思うようなことがあるようには見えませんけど…」
「あら、そう?ホストさんって女性のそういう部分を見抜いちゃうのかと思ってましたわ?」
「あ、じゃぁ…お話から始めましょうか。洋子さん、絵を描いてらっしゃるんでしたよね?」
「ええ、そうよ。あ、見てくださる?デッサンを持ってきてるの。」
そんな話から、二人は少しずつ打ち解けていった。
時間がたつにつれ、よしきは洋子の"大人の美しさ"にどんどん惹かれていった。
洋子はよしきの、夫とは違う男くささに心を奪われていくようだった。
〜続く〜
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